これから夏本番をむかえますが、暑い日に涼をとる道具と言ったら、やはりうちわではないでしょうか。
涼むための道具としておなじみのうちわの歴史をたどると、日本へは奈良時代に中国から伝わりました。
当時は宮廷や貴族の限られた階級でのみ使われており、涼をとるだけではなく、日差しを遮ったり、高貴な身分の人の顔を隠したり、また飾り用として用いられていました。
その後、戦国時代には武将が兵士を叱咤(しった)激励するために、皮や鉄で作られた「軍配うちわ」が使われるようになりました。
今も相撲の行司が土俵上で用いている軍配はここからきています。
江戸時代になってからは祭礼などに広く使われるようになり、夏祭りや盆踊りを通じて庶民の間で普及していきました。
また台所や風呂などで火起こしに使う「渋うちわ(しぶうちわ)」、町火消しが火の粉をはらうために使う長い柄の「大うちわ」なども江戸時代に登場したものです。
このように様々な場面で使われてきたうちわは、現在になっても涼むための道具として、納涼シーズンに広く使われているのです。 |
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最高気温が30度以上の日を真夏日といいますが、時には体温以上の暑さにもなることがあります。
うちわであおぐと風が起こり涼しくなるものですが、体温並みの暑さのときにうちわであおいでも涼しくなるのでしょうか。
そこで、うちわで風を送ることで温度を下げることが出来るかどうか、人の代わりに温度計を使って、うちわの効果を試してみました。
人の皮膚が汗で湿っていることを考慮して、あらかじめ温度計にも湿った布を巻いておきます。
気温が31度の場合、温度計の値もはじめは気温と同じ31度でした。
うちわであおがない場合、1分で2度ほど下がりました。これは水分が蒸発するときに気化熱を奪ったためです。
一方、うちわであおいだ場合は温度の下がり方は早く、1分で4度近く低くなりました。これは風を送ることにより、水分の蒸発量が増えて、多くの熱が奪われたためです。
実際には、気温や湿度の条件のほかに、汗のかき具合、体から発生する熱の量などにもよるため個人差がでますが、体温と同じくらいの気温の時でもうちわであおぐことは無駄ではないことが分かります。
このように、うちわを使用した場合と使わない場合とでは、うちわを使用した方が温度を下げる効果が得られるため、早く涼むことができるのです。 |