歩くとキュッキュッと不思議な音がする「鳴き砂」という砂があります。
鳴き砂のある砂浜は限られた海岸にしかないため、出会った人は少ないのではないでしょうか鳴き砂は砂が音を発するという神秘さから、古くから日本では歌に詠まれたり、海外では聖地とされるなど、人々に愛され今でも多くの伝説を残しています。
鳴き砂は一見他の砂と違いはなさそうですが、顕微鏡でのぞくとその違いがわかります。鳴き砂には粒のそろった石英質の砂粒が多く含まれていて、この石英質の砂がこすれあって、普通の砂なら鳴らない音が発するのです。
また、砂の表面に油分や汚れが付着していると、摩擦力が弱まって音が出にくくなるため、砂自体が汚れていないことも条件のひとつです。さらに、乾いている状態の方がよく鳴る特徴もあります。
このため、鳴き砂の浜でも海水によく洗われてきれいになった波打ちぎわの砂で、かつ乾いている砂を選ぶと、すてきな音に出会えることでしょう。 |
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鳴き砂はそのほとんどが海辺に分布しています。
しかし、鳴き砂のある砂浜は年々少なくなる傾向にあります。約50年前までは各地の海岸の至る所でありましたが、都市化や産業の発展によって自然海岸の減少や海岸汚染等の環境の悪化によりその海岸は消失し、鳴き砂の範囲も縮小しています。それでもいくつか鳴き砂のある海岸は残っています。
鳴き砂が見られる海岸は、踏むとキュッキュッと音を発することから語呂合わせで名付けられた宮城県の九九鳴浜(くくなきはま)があります。
また、琴の音を連想して名付けられた浜には京都府の琴引浜(ことびきはま)、石川県の琴ヶ浜(ことがはま)、そして島根県にも琴ヶ浜(ことがはま)があります。
他にも、日本列島最北端オホーツクの流氷が洗う北海道の小清水海岸(こしみずかいがん)や白い砂浜が広がり塩屋崎(しおやざき)灯台で有名な福島県の豊間海岸(とよまかいがん)などが人気の観光スポットになっています。
これらの浜では、数少ない鳴き砂を守ろうと地元の人によって率先して砂浜の清掃や訪れる観光客にマナーを呼びかけるなど保護活動を行っています。日ごろの雑踏からしばらく離れ、鳴き砂の小さな声に耳をかたむけに出かけてみてはいかがでしょうか。 |