「天高く馬肥ゆる秋」という秋のことわざがあります。このことわざの「天高く」とは、空気がすんで高く晴れわたる秋の空を表しています。
また、暑い夏のあと、涼しく快適な秋になると夏に消耗した体は元気を取り戻し、食欲もわいてきます。「馬肥ゆる」とは、まさに食欲の秋、馬も人間と同じで、よく草を食べて肥えていく、という意味です。このように、このことわざは、秋はさわやかで気持ちのよい季節であるということをたとえたものです。
しかし、このことわざはもともとは、さわやかな秋を表す言葉ではなく別のことを意味していました。昔中国では、秋になると、北方の騎馬民族が元気になった馬に乗って秋の収穫物を略奪にやってくることが多かったようです。そのため、当時、このことわざには襲来する騎馬民族に対して防備すべき季節がやってきたという意味があったのです。 |
 |
「天高く馬肥ゆる秋」ということわざがあるように、確かに秋の空は高く見えます。これはなぜでしょう。それにはいくつかの理由があります。
まず、夏と秋で雲の種類が違うことが挙げられます。夏の代表的な雲である入道雲は、よく発達していて雲のみねは高いですが雲の底はとても低いところにあります。
また、綿雲のように空の低いところにぽっかりと浮かぶ雲もよく見られます。このように夏の雲は高さが低いものが多いため、空が見える割合が小さくなります。
一方、いわし雲など秋の雲は、高い位置に美しく並んでいるため空が見える割合が多く、空が高く見えるのです。加えて、秋は空気がすんでいるという点も挙げられます。夏の空気は水蒸気を多く含んでいます。水蒸気が多いと空は白っぽくみえます。これは空気中の水分が太陽光を散乱するからです。
一方、秋の空気は乾燥していて水蒸気が少ないため太陽光は散乱しにくくなります。そのため、空気の透明度は高くなり秋のすんだ空気の下では、空が一段と高くなったように見えるのです。秋の空が一年で最も高く見えるといわれるには、このような理由があったのですね。 |