3月に入り、ようやく春が感じられるようになってきましたが、南北に長い日本列島では、一足早く夏のような天気になっている所があります。
日本列島の南端に位置する県、沖縄では3月は海開きが行われる時期です。沖縄は一年を通して暖かく、熱帯や亜熱帯の動植物が多いところですが、この暖かさは赤道により近い位置にあるというだけでなく、周りが海に囲まれているのも理由の一つにあげられます。
水は温まりにくく冷めにくい性質があるため、陸地の上と比べて海の上の空気は、一年を通じて温度変化が小さいのです。そのため海に囲まれた沖縄は冬の寒さも夏の暑さも、海によって和らげられているのです。
実際に1年の平均気温を見ても、那覇市では夏と冬で12度くらいの差しかありません。東京では夏と冬で20度以上もの差があることから、沖縄がいかに気温変化の少ないところなのかがわかります。
そのような沖縄では日本の気候の特徴でもある四季の変化があまり感じられないように思われがちです。
しかし、沖縄の人々は季節の変化を敏感に感じとっています。それがわかるものに「うりずん(うるずん)」という言葉があります。
これは暖かくなって大地が潤う季節のことで、旧暦の2月から3月あたり、今でいう3月から4月を意味しています。沖縄の冬は曇りがちで、降水量こそ少ないものの雨が降る日も多い季節です。
そんな冬から解放されたさわやかで心地よいこの時期を、沖縄の人々は「春」とも違う独特の季節、「うりずん」と呼んでいるのです。 |
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沖縄は一年を通して温暖で、夏と冬の気温差が小さいところです。しかし、沖縄の人々は昔から季節を敏感に感じ取り、独自の季節感でいくつもの季節の言葉をつくり出してきました。
3月半ば、沖縄には急速に発達した低気圧がたびたびやって来るようになります。一般に低気圧が接近してきたときには南風が吹き、通過すると北風に変わります。この時期の低気圧は十分に発達しているばかりでなくその進行速度も速いので、低気圧の通過前後で風向が急変して突風が生まれ、海はしけてしまうのです。
沖縄ではこの突風が吹き、海が荒れる季節を「二月風廻り(ニンガチカジマーイ)」とよんでいます。そして漁師たちは、海水のにごりや海草の出現などからその季節が過ぎたことを知ります。二月風廻りの風は、沖縄で最も過ごしやすい季節、「うりずん」を呼びます。
うりずんはこの3月半ばの二月風廻りの風が吹き始めた後から4月ころまで続き、その後には「若夏(わかなつ)」という気持ちのよい晴天の多い季節へと移り変わります。緑はこの時期に日の光を浴びてぐんぐんと成長し、台風や真夏の暑さに負けないたくましさを身につけます。
やがて5月中旬になれば沖縄の雨期が始まります。この雨の季節は、そのころの二十四節気の「小満(しょうまん)」と「芒種(ぼうしゅ)」の名をとって、「小満芒種(スーマンボースー)」とよばれています。気温の変化こそ乏しいものの、沖縄には表情豊かな季節があるのですね。 |